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Miyakawa Blog

ウェブディレクターが日々のことを綴るブログ

京極夏彦先生著書「陰摩羅鬼の瑕」読了のレビュー

著書名:陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) 著者名:京極夏彦 ジャンル:推理小説 出版社:講談社 発売年:2003年 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=miyakawa2449-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=4062754991

さて、「塗仏の宴」を読み終えて、引き続き次に読み入ったのは順番通りに「陰摩羅鬼の瑕」です。

今日はこの陰摩羅鬼の瑕について書きます(現在、次の作品「邪魅の雫(じゃみのしずく)」を読書中です)。

あらすじ

白樺湖湖畔(長野県)の館に住む主、由良昂允伯爵は過去に4度結婚をしている。 しかし、4度とも結婚初夜の翌日には、新婦は何者かに殺害されている。 そして、この度、5度目の婚礼を前に事件を防ぐために探偵榎木津が呼ばれる。 しかし、榎木津は旅先で発熱し、正常な視力を失い、榎木津のフォロー役に小説家関口氏が呼び出される。

過去に起きた4度の事件はどれも未解決であり、最初の事件は23年も前の事件であり時効をすでに迎えている。

その一方で過去の事件を3度まで知る元刑事の伊庭(定年で引退している)は長野県警から協力要請を受け、ある切っ掛けから古書肆の中禅寺とともに長野へ。

読みどころ

前作、「塗仏の宴」で事件に巻き込まれ、精神が崩壊した関口巽(小説家)が今回は探偵として振る舞い大活躍を見せてくれます(私が大好きな関口くん。今回はかっこいいですよ)。

関口氏は「塗仏の宴」の事件で精神が崩壊し彼岸に行きかけた彼は事件後、どのようにして今回探偵役として活躍できるまでに回復できたのか? ここは非常に重要な読みどころになります。

なぜなら関口巽という人間が持つ、「生死感」が重要な鍵になるからです。

それ故に関口巽は事件の真相にいち早く現場の中で気付き、そして苦悶するのですが。

書評・レビュー

百鬼夜行シリーズで主人公中禅寺がよくいう台詞の1つに「時代や社会が変われば正義も替わる」というモノがあります。 中禅寺の台詞でなければ、木場刑事の台詞だったかもしれません。

あまり詳しく書くとネタバレになるので、程々にしておきますが。 本作では関口巽の生死観と、社会が持つ犯罪性の定義というものが物語を紐解く上で重要な鍵となります。

著者の京極夏彦氏は登場人物1人1人に綿密な性格を当てはめていますが、同時に人間個人の多面性をうまくコントロールし、表現しています。

前回作の「塗仏の宴」と、「陰摩羅鬼の瑕」では関口巽氏の内面の多面性を上手く利用した物語の進行をしています。

前作では「容疑者」として扱われた関口氏の描写を2人の刑事の視点を通じて、関口氏の陰と陽をうまく描写されていました。 今作の「陰摩羅鬼の瑕」では、「関口巽」個人の描写(普段のオロオロしている関口氏)と、探偵として躍動的に活躍する関口氏の描写がうまく描けていたと思います。

人見知りが激しく、対人恐怖症で、失語症になりやすく、自分の出版物の評価を恐れていて、短足で、自己矛盾の多い猿顔の男としての関口。 依頼人の花嫁「奥貫 薫子」を絶対守りぬく由良伯爵と薫子に誓いをたて、精力的に活動する正義感あふれる男としての関口。

猿顔の関口と、探偵関口の描写の内容は「関口」という主体を外して読むと、全く結びつきようもないほど共通性がありませんが、そこの切り替えが上手くできるのが京極夏彦先生のセンスなのでしょうか。

さすがだと思います。